菅首相は昨年10月の所信表明にて、2050年に脱炭素社会を実現すると、日本政府として初めて宣言し、その方針について触れました。しかし大きな鍵を握る2030年に向けての具体的な方策は示されず、私たちが抱いている危機感からは未だ乖離があると感じています。また小泉環境大臣は昨年12月の記者会見で、昨年は3つのC(Coal, Carbon Neutral, Carbon Pricing)の劇的な変化が起きたと評価しました。確かに、過去の日本を顧みれば進展ではありますが、今年は気候変動対策に中立な科学者の声をより反映し、気候危機に対しより実効的な行動を行うことが強く要求されます。菅首相が昨年12月の気候野心サミットで述べたように日本が気候変動の分野で「指導力を発揮していく」ためには、実効的な行動は必要不可欠です。

【1.5℃目標からのNDC引き上げの重要性】

-NDCの大幅な引き上げは必要不可欠-

 私たちFridays For Future Japan(以下、FFFJ)は要求の一つに、NDCの数値の大幅な引き上げを求めています。なぜなら温暖化による気候変動のメカニズムは不可逆的だと多くの科学者が警鐘を鳴らし、一つの目安として1.5度上昇に抑えることが強く求められているからです。気温上昇を1.5℃以内とするためには、2030年までに2010年比で45%削減が必要であり、先進国の日本は、それ以上の削減が求められています。現在地球の平均気温は約1.2℃上昇したと伝えられ、このままだとあと数年で1.5度上昇に達する可能性が約20%存在すると言われています。私たちは環境省の方々が各々より危機感を持ち、NDCの野心的引き上げのために全力を尽くすことを求めます。

-国外の石炭火力発電輸出計画の撤退-

 2020年2月に小泉大臣が問題提起されたベトナムのブンアン2石炭火力発電所建設計画に対し、世界20以上の機関投資家も計画の撤回を求める声明を発表しています。昨年12月に国際協力銀行から正式に計画融資が発表されましたが、今後数十年に渡りCO2排出をロックインし、世界全体のCO2削減を妨げるブンアン2へ支援を行うことは「石炭火力発電輸出は相手国の脱炭素化への移行の一環であること」という政府方針に整合しているのでしょうか。

 1.5℃目標達成のために、日本はこれより10年の脱炭素化政策実行に更に拍車をかける必要があります。その起点として、今後長期的にベトナムのCO2排出をロックインし、大気汚染を深刻化させる、ベトナム・ブンアン2をはじめとする石炭火力発電事業の中止をすべきです。 

-国内の石炭火力発電依存からの脱却-

 また、日本国内には今後16基も新たに稼働予定の石炭火力発電所があります。高効率の石炭火力発電でさえも二酸化炭素排出量は依然高いままであり、根本的な気候変動対策にはなりません。多くの国が脱石炭火力の具体的なロードマップを明らかにしていますが、日本では議論さえされておらず、他国と比べて非常に遅れています。

 本当にパリ協定の1.5度目標を達成させるのであれば、2030年までに国内の石炭火力発電所は段階的に全廃とする必要があります。非効率石炭のフェーズアウトにとどまり、現段階でコストが高く実用化されていないアンモニアや水素の混焼技術の利用に頼ることは、高効率石炭の維持・拡大による排出ロックインにつながる危険性があります。石炭火力発電を延命するべきではなく、今後追加的な排出をしないことを大前提とするべきです。横須賀や神戸をはじめとする全国の石炭火力発電所の建設中及び計画中の案件を非効率・高効率にかかわらず中止すべきです。

-網羅的かつ早急なエネルギー構造の転換を-  

 エネルギー消費量の大きい熱需要や運輸などの非電力セクターの脱炭素化に、より重点をおくべきであり、北欧やEUに倣って(EU加盟国のNational Renewable Energy Action Planなどをみならって)、空調や温水、産業プロセスでの熱需要などを含む熱利用部門と運輸部門のそれぞれに2030年再生可能エネルギー導入目標(電化やバイオマス・グリーン水素の利用、ヒートポンプの利用などによって達成される)を定めるべきです。また、急速な電化を進めるために化石燃料の使用や設備の規制や段階的・局所的禁止などの施策を検討する必要があります。その際の水素利用については、化石燃料由来の水素ではなく、再エネ由来のグリーン水素の供給に全力を入れ、世界全体の脱炭素化に貢献すべきです。 

 今後、脱炭素社会を築くためにはあらゆる分野の省エネの徹底が必至であります。エネルギー消費量・電力消費量を2030年までに2010年比で30%減らす必要性を示すレポートもあり、1.5度目標達成のためにはさらなる削減が必要とされます。住居、施設の断熱性の向上は特に大きな費用対効果が望まれます。また不確実性の高い技術革新だけに頼るのではなく、石炭火力発電所のフェーズアウトや化石燃料の利用廃止に向けて、経済的インセンティブを与えるに十分な炭素価格の導入といった具体的政策を早期に実行に移していくべきです。

【国民を巻き込んだ政策決定プロセス 】

-透明性および公正性の保たれた政策決定-

 FFFJが昨年8月から12月までに行った「政府に本気の気候変動対策を求める署名」では、4万近い賛同が集まりました。気候変動が我々の生活、将来、命に関わる問題だということに多くの人が気づいており、言葉だけでなく、気候変動を止めるための確かな行動を政策決定者に求めています。そして、国民を巻き込んで議論を行い、透明性および公正性の保たれた政策決定が行われるべきです。

-国と地方でオープンな気候変動市民会議を-

 また、欧州では国民を巻き込んだ会議システムが先進しています。これを参考に、日本でも幅広い層の国民を無作為に選定した、オープンな気候変動市民会議が国や地方自治体で行われるべきです。これは菅首相の所信表明にも挙がっていた「国と地方の話し合いの場」の新たな形を提示しています。2030年までの短期目標について話し合われること、ここで得られた意見や結論は国や地方自治体の気候変動政策に確実に組み込まれることを強く求めます。政府はこういった場の実現のため、積極的な支援を行うべきです。

以上

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