声明文 COP30で私たちが求める6つのこと

Fridays For Future Japan 全国有志

気候変動対策を国の最重要課題の1つとして取り組んでください

 気候変動への対策が日本において最重要課題の1つであることには、議論の余地がありません。温室効果ガス排出量世界第5位であると同時に、毎年のように豪雨や熱波などの被害も受けています。

 気候危機の被害の規模を大きく左右するとされる、地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃未満に抑える目標を達成するために、2030年までに排出できるCO2の量はほとんど残っていません。一刻も早い対策が必要です。

 しかし、新首相となった高市早苗氏の所信表明演説には、「気候変動」や「地球温暖化」という言葉はなく、COP30の首脳会合も2年連続で欠席することになりました。このような政府の消極的対応は、気候危機という命と権利の問題に、真正面から真摯に向き合っているとはいえません。

 高市内閣、環境省、経済産業省と、COP30に参加する各国政府に対し、気候危機回避と公正な社会を実現するための行動を求めます。


②化石燃料から脱却し、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー政策を進めてください

 世界では太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの発電量当たり新規建設コストが火力発電や原子力発電よりも安くなっており、エネルギー転換が進んでいます。

 一方、現状の日本は石油や石炭など化石燃料の大半を輸入に依存しており、2023年の輸入額は27.3兆円を記録しました。これは同年の貿易輸入額合計110.2億円の約4分の1に相当します。さらに近年の円安と世界情勢の悪化に伴い、エネルギー価格は高騰しており、これが電気代や物価の上昇の要因となり国民生活を苦しめています。

 日本政府に対して化石燃料からの段階的な脱却を進めて、大規模な森林伐採等の環境破壊を伴わない形での再生可能エネルギーを最大限に普及させることで、エネルギー自給率を向上させることを求めます。

 加えて、日本を除く他のG7諸国では化石燃料の中でも特にCO2排出量の多い石炭火力について既に廃止、あるいは廃止の方針が決定されています。日本も2035年までに国内の石炭火力発電所を全廃することを打ち出すべきです。


日本の国別削減目標(NDC)を1.5℃目標に整合するように引き上げてください

 日本政府は今年2月に新たな温室効果ガス削減目標をNDCとして提出し、「2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す」としました。しかしながら、この目標は不十分と言わざるをえません。IPCCの第6次報告書によれば、50%の確率で1.5℃に気温上昇をとどめるためには、世界全体で、2019年と比較し2035年までに60%、2040年までに69%温室効果ガスを削減する必要があります。

 日本政府の目標は2013年比となっていますが、2013年の排出量(14億800万トン、CO2換算)は2019年(12億1200万トン、CO2換算)と比べ約16%多いことを踏まえると、また1.5℃目標の達成確率を上げるにも、また日本は今まで多くのCO2を排出してきたことからも、現状の日本政府の目標は引き上げられるべきであるといえます。

 Climate Action Tracker(2024)は、2035年までに81%削減する必要があると提言しています(2013年比)。また、これまでの排出量を考慮した公平性の視点で考えると、2030年までに100%以上削減しなければならないという指摘もあります(明日香, 2021)。日本政府はこのような野心的目標を設定すべきです。


④COPにおける約束を守ってください

 日本政府は、過去のCOPにおける1.5℃目標の国際合意を遵守し、野心的な気候対策に直ちに転換すべきです。COP28では、新規石炭火力建設停止のみを表明し、既存火力維持方針や削減効果の不確かなアンモニア混焼・CCS(二酸化炭素の回収・貯蔵)への投資を拡大するGX構想を示したことが、COP25以降6年連続での「化石賞」受賞に象徴される国際的批判の対象となっています。さらに、今年7月の国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見では、先進国に途上国への資金提供義務が課されており、国際法上の責任履行が求められています。

 新規合同資金目標(NGCQ)は妥結した一方、2035年目標の引き上げは先送りされました。日本の2035年目標案は、IPCC報告書やCOP28成果文書、G7合意と整合せず批判を受けましたが、当初案が踏襲され、「2035年度60%減」「2040年度73%減」(2013年度比)とされました。

 2035年目標は気候危機対応の核心であり、日本政府は過去のCOPでの目標を遵守し、国際基準と先進国としての責務に従い、①1.5℃目標に整合するNDCの引き上げ、②2035年までの石炭火力全廃、③再生可能エネルギーの大幅拡大と電力システムの改革、④気候資金・途上国支援の強化、⑤先住民・地域権利の尊重および透明で民主的な政策形成を速やかに推進すべきです。1.5℃目標やCOPでの合意に対し、「あくまで世界的目標であり、日本単独で遵守する必要はない」といった自国事情を理由とする無責任な消極姿勢を示すのではなく、国際基準に沿った実効的な気候対策を求めます。


⑤公正な移行(Just Transition)による社会全体の脱炭素化を求めます

 気候変動への取り組みとして早急な脱炭素化が求められると同時に、労働者の権利、移行によって影響を受ける地域への支援は不可欠です。労働者、地域社会、若者、性的少数者、障害者、先住民などの声が反映される場を設置し、グリーン経済への移行に必要な資金や能力開発の提供するよう日本政府に求めます。エネルギー、農業、その他あらゆる産業において誰1人取り残すことのない公正な移行を進めるべきです。そして国内だけでなく、脱炭素を進める上で障壁と成り得る国家間格差を是正するため、国際協力の中核を担う”公正な移行メカニズム(BAM)”の創設を求めます。


⑥気候正義の実現を求めます

 気候変動の脅威が、子どもや高齢者、女性や性的マイノリティ、低所得者、先住民族、「途上国」などのの人々に、より甚大に降りかかることはいうまでもなく、対策とそのプロセスは、マイノリティの権利が尊重されるものでなくてはなりません。

 あらゆる不公正を是正し、すべての人々や生物の権利と尊厳が尊重される対策を進める考え方を「気候正義」といいます。COPにおいて、より被害を受ける人々と地域の参加はより尊重されるべきですが、依然として進んでいないのが現状です。日本からも少なくとも17人の化石燃料ロビイストがCOPに参加し、対策を遅らせ、マイノリティの権利を脅かしています。

 また、日本政府と企業は、マイノリティの権利を侵害するプロジェクトに積極的に加担してきました。今年9月には、日本最大の火力発電事業者「JERA」が、米エネルギー開発会社グレンファーンと、LNG年間100万トンを20年間供給することで合意。米トランプ政権が推進するアラスカ州の液化天然ガス(LNG)開発プロジェクトに関心が表れています。国内外で、自然や動物、気候危機に加担していない人々をさらに抑圧する構造を生み出すことは、やめるべきです。

 また、気候資金の公正な分配は重要です。これまで国際的にみてもより排出してきた立場にある日本にとって、より「Loss and Damages(損失と被害)」を被っている地域の適応や公正な移行のための資金提供は、もはや貢献ではなく義務といえます。

 気候正義に基づき、環境汚染と権利侵害を引き起こす事業からの撤退と、気候資金への責任ある参加を求めます。

米アラスカLNG事業、JERAに年100万トン供給 20年間 | ロイター


参考文献

Climate Action Network Japan(2025)『日本がCOP30で「本日の化石賞」を受賞』(オンライン)2025年11月15日アクセス<https://x.gd/RzLYE>.

桃井 貴子(2024)『気候変動とCOPのテーマ』朝日新聞SDGs Action.(オンライン)2025年11月19日アクセス<https://x.gd/hsA7a>. 

環境省(2023)『国際気候変動枠組条約第28回締約国会議』日本政府代表団.

環境省(2024)『国際気候変動枠組条約第29回締約国会議』日本政府代表団. 

田中 健『G7の一員として、日本が化石賞を受賞しました』WWFジャパン(オンライン)2025年11月15日アクセス<https://x.gd/7hmLU>.

明日香壽川. (2021). 「気候変動というグローバル・リスクの現状と課題」. 公共政策研究, vol. 21, pp. 80–89. https://doi.org/10.32202/publicpolicystudies.21.0_80.

環境省. (2015). 「2013年度(平成25年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について(お知らせ)」 https://www.env.go.jp/press/100862.html

環境省. (2021). 「2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について(お知らせ)」https://www.env.go.jp/press/109480.html

Climate Action Tracker. (2024). Climate Action Tracker 2035 NDC Japan. https://climateactiontracker.org/countries/japan/2035-ndc/>

財務省(2024)『日経エネルギーNext 安定供給の要を石炭火力から蓄電池へ、ハワイの選択』<https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00007/00120>

BloombergNEF(2025)『Levelized Cost of Electricity 』

 IPCC, 2023: Summary for Policymakers. In: Climate Change 2023: Synthesis Report. Contribution of Working Groups I, II and III to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Core Writing Team, H. Lee and J. Romero (eds.)].IPCC, Geneva, Switzerland, pp. 1-34, doi: 10.59327/IPCC/AR6-9789291691647.001