G7会合気候・環境大臣会合、首脳会合に際する声明

Fridays For Future Japan

2021年6月4日

 2021年の今年は、気候変動対策に向けて世界的に舵を切るきわめて重要な年である。今回5月20日から2日間開催されたG7気候・環境大臣会合、6月11日から開催されるG7首脳会合では、日本がいかに脱炭素を発表できるかが、今後の気候変動問題解決の鍵となる。

 

 しかし、G7気候・環境大臣会合では日本が気候変動対策をリードしていくどころか、2030年目標に対し後ろ向きな姿勢が見受けられ、非常に残念である。特に石炭火力発電に関して言えば「石炭火力発電が世界の気温上昇の唯一最大の原因であることを認識」しているにもかかわらず、海外の融資停止期限がなく、「各国の裁量に任せ」ている点から厳格な融資禁止に対する行動は不明確だ(1,2)。また、日本国内にしても低効率、高効率関わらず停止する時期が明記されず、世界からも後れを取っている(3)

 気候変動を解決するために日本は野心的な政策と、大胆な行動が求められている。

 

歴史的排出量の責任を踏まえた日本の排出量削減設定を

 気温上昇を1.5度以下に抑えるために、グテーレス国連事務総長は日本などOECD加盟国に対し、石炭火力発電を2030年までに廃止することを求めている(4)。さらに今月発表されたIEAの2050ネットゼロレポートでは2035年までの電力セクターの完全な脱炭素化の重要性が指摘された(5)歴史的に大量のCO2を排出してきた国の責任として日本は、現在発展が進み炭素予算が必要な途上国との公平性を担保するためにも、2030年までの早急な石炭からの脱却が必要だ。

 

気候正義の観点から見た石炭の不必要性に責任のある行動を

 石炭などの化石燃料の燃焼により悪化する気候変動の被害を最も受けるのは、グローバルサウスや貧困層など、声をかき消されてきた人々だ。また、継続的な化石燃料の発電利用はまだ社会で声を上げることが出来ない将来世代の未来を奪う暴力となる。現在石炭火力発電などを運転する企業やそれを容認している政府は、将来世代から多額の損害賠償で訴えられるリスクと直面するであろう。気候正義の観点を考慮したより責任のある行動として脱石炭を掲げる必要がある。

 

国内外に建設中の石炭火力発電計画の早急な停止

 今回のG7において、日本は英国の「炭素集約型のエネルギーへの政府支援をフェーズアウトする」という提案に2日間にわたり猛反発したが、「各国の裁量」という例外を除いての合意に至った。日本が気候変動政策において世界でリーダーシップを取るのであれば、石炭火力発電所の新規増設の差し止め、高効率を含む石炭火力のフェーズアウト、国内外の石炭火力融資の撤退を速やかに行うべきだ。また政府はCCUSやアンモニア混焼の石炭火力の早期実装を目指しているが、このようなあらゆる面で不確実性が高い技術に依存するのではなく、既存の再生可能エネルギー技術の導入が必要だ。また、再生可能エネルギー導入にあたり、生物多様性や住民への理解など様々な観点を考慮しながら、最大限に活用していくことが必要だ。

 

野心的な実行に基づいた早急な政策の実施を

 先日5月24日の気候変動に関する有識者会合において、菅首相から「世界全体の脱炭素化に向けたG7の結束をさらに強化し、日本のリーダーシップを示す機会としたいと思っており、具体策の検討を進めていく」との発言があった。日本政府は今、新たな温室効果ガス削減目標の表明にはじまり、これまでのサミットでの約束、発言を具体的な方針で示す必要に迫られている。

 原子力発電は安全対策費用の増加等コストの観点から、ベースロード電源と呼ぶには課題が山積みであり、放射性廃棄物処理においても将来世代に課題を残したまま議論だけが進められている状況だ。世界で脱炭素化に向けて倫理的観点が重視されるなかで、日本も世代間不平等などの気候正義の観点が無ければ「リーダーシップ」はただの絵空事になる。

いまCOP26を前に、日本が「G7の結束をさらに強化し、日本のリーダーシップを示す」ために私たちが必要とするのは、1.5度目標と気候正義に基づいた行動であり、空虚なサミットや約束ではない。

以上

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(1) G7 United Kingdom 2021. “G7 Climate and Environment Ministers’ Meeting Communiqué” 2021-5. https://www.env.go.jp/press/files/jp/116305.pdf. (参照 2021-06-02)

(2) 環境省. G7 気候・環境大臣会合コミュニケ 日本語訳 (暫定仮訳). 2021-5. https://www.env.go.jp/press/files/jp/116310.pdf. (参照 2021-06-02).

(3) BBC. “Climate change: G7 ministers agree new steps against fossil fuels“. 2021-5. https://www.bbc.com/news/science-environment-57203400. (参照 2021-06-02).

(4) 日本経済新聞. “国連事務総長「石炭火力の段階的廃止を」先進国に要求”. 2021-03. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN02EHZ0S1A300C2000000/. (参照 2021-06-02).

(5) International Energy Agency. “Net Zero by 2050 – A Roadmap for the Global Energy Sector”. 2021-5. https://www.iea.org/reports/net-zero-by-2050. (参照 2021-06-02).

(6) 首相官邸. “気候変動対策推進のための有識者会議”. 2021-5. https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202105/24kikou.html. (参照 2021-06-02).