COP27活動報告:「気候賠償」を求めるアクションに参加!

「失われた生活への賠償を」「奪われた土地への賠償を」「人々の健康を取り戻すための賠償を」——11月11日(金)には、COP27会場の真ん中の広場で、グローバルサウスの活動家を中心に、青色に身をまとった人々が集まりました。波を表現した集会は、COP27の期間中のアクションで最も大きなものの一つとなりました。

 この日、人々が求めたのは、「気候賠償」でした。私たちもこのアクションに参加しました。この記事では、なぜ私たちは「気候賠償」を求めたのか、その理由と、集会の様子について紹介していきます。

■なぜ、「気候賠償」を求めるのか
 グローバルサウスの人々は、これまで気候危機への加担が少なかったにも関わらず、気候危機の影響を不釣り合いに大きく受けてきました。そのため、彼ら彼女らは、これまでサウスで引き起こされてきた被害に対して、賠償を求めているのです。

 例えば、この夏のパキスタンで起きた大洪水について思い出してください。現地では、日本の本州とほぼ同じ広さの、国土の1/3 が水没し、人口の約15%にあたる3300万人以上が被災しました。これまでに少なくとも1,400人が亡くなり、被災した家屋は100万戸以上。洪水が引いても、コレラやマラリア、デング熱の拡大、そして経済危機が加わり、被害は続いています。しかしパキスタンは、地球温暖化の原因となるCO2の排出量がとても少ない(全体の1%未満)にもかかわらず、このような甚大な被害を受けました。
 
 このような状況で、サウスの人々は、歴史的にCO2の排出といった環境負荷をかけ続けてきた、アメリカや日本といったグローバルノースの国々の政府に、賠償を求めているのです。

 しかし、これらノースの国々は、賠償を頑なに拒んできました。アメリカのジョン・ケリーは、気候危機の影響を受けるサウスの人々のための、「気候資金」の創設を行わないということを明言しました。気候資金は、これまで引き起こされてきた被害と損害に対する補償から、これからの危機の緩和や適応の費用までを賄うために、各国が責任に応じて金銭を拠出するというものです。アメリカは、これに応じない態度を理由に、COP27期間中に1度目の「化石賞」を受賞しました。

 このようなアメリカを始めとしたノースの国々の政府の態度に対して、サウスの人々は強く賠償を求めているのです。歴史的に多くの環境負荷を与えてきた、日本も例外ではありません。

 私たちも、サウスの人々と共に、日本といったノースの国々の政府が賠償を行うよう、11日の集会を含めCOP27の会場で求めました。

■群衆が求める「賠償」
 それでは、11月11日のアクションの様子について、現場で掲げたメッセージやモチーフから紹介していきます。

 人々が掲げていた、青い旗に書いてあるメッセージに着目してみましょう。それぞれ、「失われた生活への賠償を」や「奪われた土地への賠償を」、「人々の健康を取り戻すための賠償を」といった文言が書かれています。

 日本で気候危機について語られるさいに、二酸化炭素排出量や気温上昇といった、数字の話が中心になってしまうことが多々あります。しかし気候危機の全容は、実際に生活する人々を取り巻く問題として考えなければ、抽象的な議論になってしまい本質を見失ってしまいます。

「失われた生活への賠償を」・・・
 パキスタンやバングラデシュ、インドは、毎年、サイクロンとそれにともなう洪水によって大きな被害を受けています。人々は、大洪水の中に畑や家を失っています。
 あるいは、バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電所の建設に伴う工事で、川の形が変えられたことにより、漁業被害が報告されています。世界では多くの人々が、開発による環境が破壊によって、生活の糧を失っています。

LOSS DAMAGEと書かれた旗を掲げる人々

「奪われた土地への賠償を」・・・

 これは洪水や干ばつ、海面上昇、山火事によって失われた土地に限りません。グローバル企業と、それらと結びついた軍隊や警察によって、資源開発のために奪われていった土地のことも含みます。

 COP27の期間中、私たちは、同世代のフィリピンの活動家、アラブ・アイロソさんと行動を共にすることが多々ありました。彼女の父は、開発によって奪われようとしている土地を守っていました。しかしそのことを理由に、アイロソさんが幼い時に、彼女の父は誘拐されて、それ以来行方不明となりました。このようなことがフィリピンを始めとしたグローバルサウスの各地で起きているのです。

 

「人々の健康を取り戻すための賠償を」・・・

 この夏、世界各地を熱波が襲いました。例えば、インドやパキスタンといった南アジアでは、気温が40℃以上を超える日々が続きました。野外で働く労働者や、冷房のない家に住む多くの人々が犠牲になったことを想像するのは容易です。

 

 日本でも、この夏の熱波で多くの人が熱中症で倒れました。その多くは炎天下であっても野外で働かなくてはならない労働者であったり、貧困から冷房を使えないような困窮者であったり・・・。気候危機による健康被害は、この社会で弱くさせられている人々に大きく降り掛かります。

グローバルサウスの人々と、彼ら彼女らと連帯し、共に声をあげる世界の人々が求める、「気候賠償」の背後には、このような被害の問題があるのです。